人間をはじめ、生物にとって睡眠は生命維持をするうえで欠かせません。
しかしかつおは寝ているイメージがなく、泳ぎ続けている様子しか見たことないですよね。
実はかつおも睡眠はとっています。ただし泳ぎながらです。
人間では考えられないその習性について、深掘りしていきましょう。
※記事監修:かつおの本場、高知県中土佐町久礼、大正町市場の藁焼きタタキ専門店「山本鮮魚店」の店主山本忠宣。
かつおが寝る時も泳ぎ続ける理由
かつおに寝る時も泳ぎ続ける習性があるのは、せっかちな性格だからではありません。
その理由は、主に以下の2つとされています。
・泳いでいないと酸素を取り込めず死んでしまうため
・泳いでいないと沈んでしまうため
それぞれ詳細にみていきます。
泳いでいないと酸素を取り込めず死んでしまうため
海の中にいるので魚は呼吸していないと思われやすいですが、人間と同じくしなけれなりません。
人間の呼吸は「肺呼吸」ですが、魚の場合は「エラ呼吸」です。
エラ呼吸の仕組みは、エラを開閉することで水中の酸素を取り込みます。
一方で、かつおのエラは開閉する仕様になっていません。つまり多くの魚が可能なエラ呼吸ができないのです。
そのためかつおは、口を開けて泳ぐことで水を取り込み、口内からエラに水を送ります。
そしてエラを通過する際に酸素を取り込む、という特殊なエラ呼吸をしています。(この呼吸法を「ラムジュート換水法」という)
つまりかつおは泳いでいる時にしか呼吸ができず酸素を取り込めないため、止まることができません。
こちらはかつおは泳ぎ続ける最大の理由です。
泳いでいないと沈んでしまうため
サメなど一部の魚を除き、多くの魚は静止していても体が沈まないように「浮き袋」を有します。
これはかつおも例外ではありませんが、かつおの浮き袋は未発達であるため、止まると体が沈んでしまいます。
動き続けないと沈んでしまう生涯。文字にするとカッコよささえも感じてしまう、かつおの運命です。
かつお以外に泳ぎながら寝る魚は?
かつお以外にも、まぐろ、サバ、ブリ、イワシなど、泳ぎながら寝る魚は多いです。
主に、広域を泳ぎ回る「回遊魚」と呼ばれる魚が該当します。
しかしアジやタチウオなど一部の回遊魚はエラを動かせるため、泳ぎ続ける必要はありません。
同じ回遊魚でも、ラムジュート換水法をしているかどうかは分かれるということになります。
まとめ
決して「寝ていない」のではなく、「寝ているように見えない」ということが分かっていただけたでしょうか。
かつおをはじめ、泳ぎ続ける魚は高たんぱく・必須脂肪酸が豊富という特徴もありとても健康的です。
泳ぎ続けるからこそ身に付いた栄養豊富な魚を、命に感謝していただきましょう。