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かつおは市場で回っているすべての個体が天然ものであり、養殖ものを見かけることはありません。

本記事では、かつおの養殖の実現が難しいとされる理由や実際の養殖事例について解説します。ぜひ参考にしてください。

※記事監修:かつおの本場、高知県中土佐町久礼、大正町市場の藁焼きタタキ専門店「山本鮮魚店」の店主山本忠宣

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かつおの養殖の実現が難しいとされる理由

養殖のイメージ

かつおの養殖の実現が難しいとされる理由には、以下があげられます。

・飼育が難しい
・利益が出にくい

それぞれ詳細に解説します。

飼育が難しい

かつおは日本の近海では太平洋側に広く分布している回遊魚です。回遊魚とは、ある特定の時期や季節に一定の経路を通って移動する魚を指します。

かつおは群れで動く習性を持っており、春頃に九州の南部から太平洋を北上し始め、夏頃には北海道の南部に到着します。その後同じルートを通って、再び九州の方面へ南下します。

かつおなどの大型の回遊魚は、養殖するために十分に活動できる広い生簀が必要です。しかし、コストが高い、用意するのが困難といった理由から、養殖に向いていないとされています。

利益が出にくい

かつおの養殖は手間やコストがかかることに加えて、飼育方法が難しいため簡単には行えません。また、養殖に成功したとしても利益が出なければ飼育にかかった手間が無駄になります。

例えば、かつおと同じ大型の回遊魚であるマグロは高値で売れる傾向にあり、養殖にかかったコストを回収しやすいです。一方かつおはマグロと比較して、1匹単位のサイズが小さいなどの理由から大衆的な価格で流通しています。そのため、利益を得ることが難しいとされています。

かつおの養殖を行った事例

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かつおは養殖が困難とされていますが、実際に養殖を成功した事例は全国でいくつか確認されています。

・高知県の事例
・愛媛県の事例
・和歌山県の事例

上記3つの事例をピックアップし、詳細にみていきましょう。

高知県の事例

高知で水産事業を行っている株式会社山崎技研と高知大学が協力して実現した、高知県でかつおの養殖に成功した事例です。

親鰹から卵を取って孵化をさせ、脂ノリが良いトロカツオ(戻り鰹)に育てるという取り組みのもと進めていました。

はじめのうちはかつおを30匹水槽に入れても、餌を食べない個体がいるなどの原因から1カ月ほどで全滅してしまうなど、養殖の難しさに直面していました。しかし、回数を重ねるにつれ死亡する確率が減少し、多くのかつおが生き残るようになりました。

参照元:株式会社山崎技研(https://www.yamasakigiken.co.jp/news/katsuo/)

愛媛県の事例

愛媛県でスマガツオの養殖に成功した事例を紹介します。

スマガツオとは、かつおとマグロの中間の身質をしているかつおの一種を指します。単体で、もしくは数匹程度の群れを形成して回遊するため、漁獲が安定せずかつおのなかでも希少価値が高いです。

スマガツオの養殖は、愛媛県と愛媛大学の研究や養殖業者の技術が連携することで、課題を解決し出荷ができるまでに至りました。

養殖されたスマガツオは「媛スマ」と呼ばれており、戻り鰹に近い脂ノリは絶品です。

参照元:dancyu(https://dancyu.jp/read/2022_00005653.html)

和歌山県の事例

和歌山県でスマガツオの養殖に成功した事例を紹介します。

和歌山県ではマダイの養殖が盛んに行われており、そこで使用していた生簀でスマガツオの養殖を行われました。

日本で初めて、人工的に孵化させたスマガツオの稚魚の量産化に向けた技術開発に成功した事例です。

参照元:和歌山県公式HP(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071001/sub2_3suma.html)

かつおの養殖についての今後の展望

かつおの養殖の研究は現在もさまざまな場所で行われており、より安定した方法の発見に産官学で連携して取り組んでいます。しかし、現段階ではかつおの養殖はしばらくは難しいでしょう。

また、近年では温暖化の影響などにより海洋環境が変化し、天然かつおの水揚げ量が減少傾向にあります。養殖の方法が確立するにはまだ時間が必要なため、まずは直近の課題として、天然かつおの水揚げ漁を落とさないために漁師の確保が重要です。

そのほか、一本釣りや巻き網文化の継承、高知をはじめとするかつお食文化の発展などにも力を入れて取り組むべきでしょう。

まとめ

かつおは飼育の難しさや利益の問題により、現在では安定した養殖は困難であるといえるでしょう。しかし、今後の研究によっては養殖かつおの安定供給も実現するかもしれません。

天然かつおの漁獲量が減少している現在、養殖かつおの実現は多くの方に望まれているのではないでしょうか。

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